私は、結婚して2回目の引越し先が、夫の会社の社宅でした。「社宅」といっても、私の住んでいた社宅は、よくホームドラマに出てくるようなドロドロとしていた関係ではなく、皆が良い人で、それぞれ深入りはせずに、良い関係の続く社宅生活でした。

 しかし、私にとって社宅生活には、利点と欠点がありました。私が、社宅生活をしていて気付いた事を、経験を踏まえて書いて行きたいと思います。社宅生活の奥様は深く頷きながら、読んで頂けたらと思います。

私が、まず社宅に入って思ったことは、「いじめられる」という恐怖です。当時21歳だった私は、一番若かったこともあり、とても怖かったのです。胃も壊しました。10世帯の奥様達は、歳もバラバラなら、出身地も異なります。たくさんの価値観の違いと遭遇しました。

そのような中でもまず、利点から書きたいと思います。それは何よりも「人生勉強」が出来るということです。歳も出身地も違う女性達の集まりというのは、いろいろありますが、本当に面白いものです。いろいろな人がいて、その中で一緒に会話や、行動をすると、観察力が増し、物事を広い視野で考えられるようになります。中には些細な喧嘩のようなものもあります。しかし、トータル的には、社会人に一番必要な、社交性が身に付きます。マンションなどで、隣人と挨拶も交わさないような生活が当たり前の世の中で、このような勉強のチャンスは、めったにないと思うのです。

もう一つは欠点。それは、妻の行動で「旦那の立場」も左右する、ということです。社宅は、マンションとは違い、上司や部下や同僚などと、共同で生活をします。小さなルールもあります。その中で妻の態度などは、社宅中に広まります。そして何よりも、その広まるスピードが速いという現実があります。

社宅の仲良しの奥様同士でも、旦那の立場上、それぞれ口に出せないこともあれば、言ってはいけないこともあります。それを会話の中で、すばやく察知し、言葉を選ばなくてはいけないのです。それが出来ない人は、「おしゃべり」「スピーカー」などというレッテルが貼られ、旦那様達から嫌われる存在になってしまうのです。そうなると、奥様達からも一歩引かれて付き合う存在に急変し、その奥様の旦那様の立場も悪くなってしまうことがあります。

私の場合、一番気を付けていたことは、「目立つ行動をしない」ということです。私は楽しいことが好きなので、楽しければなんでもオッケー、という目立った行動をしてしまう癖があります。それはたくさんの人が集まったときに出てしまうので、奥様たちの集まりがあるときには、ひたすら我慢し、なるべく大人しい私を演じていました。

そう、社宅生活は演じなくてはいけません。仲がいい人にはする必要がないのですが、深入りをしていない関係を保つには、自分を見せる必要はないのです。少し寂しいのですが、それが現実だと思うのです。

例えば職場などでも、ルックスが少しでも派手な人は、会話の対象になってしまうことがあるように、集団の中で上手くやっていくには、目立ってはいけないのです。しかも、今回の場合は職場ではなく、社宅です。前にも言ったように、一人の問題ではなく、夫や家族に影響してしまいます。それが、一番の欠点です。

少し自分本位に考えてしまいがちな方は、社宅生活をお勧めします。社宅を良いものにするも、悪いものにするも、自分次第なのです。

もし私が、自分さえ良ければいいという考えで、社宅の中で行動していたら、このエッセイはどのような内容になっていたでしょう。まず最初の書き出しは…「社宅生活は最悪でした。皆、意地悪でした。皆で私を無視し、いじめるのです。」…きっとこんな感じでしょうか?



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