|
次の日、憂鬱な気持ちで会社に行くと、見た目40歳代後半くらいの見慣れないおばさんが、木村さんのデスクの椅子に座っていた。
そして私を見るなり、スクッとたちあがり、目を輝かせ私の両手を強く掴み言った。
「あなたがまことさんねっ。」
行き成り親しくされてビックリはしたが、どうやら私の事を知っている人のようだった。
「あの、、、どちら様ですか?」
私が問うと、おばさんは申し送れましたと言わんばかりに、身なりを整えあらたまった。
「金子です。金子の妻の真里子です。」
社長の奥さんだった。私は余計にびっくりして、思い切り頭を下げた。そして初めて冷静にお互いが挨拶を交わし、2人は会話をした。そしていろいろな話を聞いた。
この会社の設立理由と会社名の由来。
奥さんは56歳で、社長より10歳も年上ということ。
奥さんは昔、東京銀座でクラブのママをしていたということ。
社長は昔、株のバイヤーをしており、そのクラブで奥さんと出会い結婚したということ。
社長と結婚してもう30年が経っているということ。
社長のどうしようもない性格のこと。
金儲けの仕方。
そして、彼女は木村さんの変わりの助っ人で来たということも判明した。
・・・待てよ。
玲子さんはどうなる。
玲子さんはどうする。
重なる疑問。重なる不安。
奥さんにトイレ掃除や給湯室の利用方法、その他簡単で細かな会社の業務を引継ぎしながら、少し雑談をしていると、あっという間にお昼になってしまった。
お昼御飯を食べ、午後になり、とうとう玲子さんの出勤する時間になった。
社長は今日は大事な打ち合わせがあり、まだ会社には戻ってこない。内海さんも現場に出ていて、私と奥さんの2人だけがオフィス内に残された。
奥さんと楽しく雑談をしていても頭に入らず、受け答えが出来ないほどに、今後のことで頭がいっぱいになってしまう。
どうしよう。玲子さんが来ちゃう。
すると、会社の入口の自動ドアが開いた。
玲子さんがいつものようにやってきた。
|